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過硝酸を利用した世界初の殺菌技術の実用化

TEL. 06-6105-5211

大阪大学大学院工学研究科 北野研究室

殺菌の実例NEWS&FAQ

栄養細胞

殺菌力

菌液だと合成した過硝酸の溶液の数十万倍希釈程度で十分に無菌化が出来ます。グラム陽性・陰性、嫌気性菌、好酸性菌など様々な菌種を用いて実験を行いましたが、全く問題なく不活化できています。

バイオフィルム

一般的にバイオフィルムを形成すると殺菌が困難になる場合がありますが、過硝酸の濃度を少し上げることで問題無く殺菌ができます。一般的な殺菌剤と異なり、殺菌剤の濃度を上げやすいのが過硝酸の特徴になっており、共培養など様々なタイプのバイオフィルムに対して殺菌効果を実証できています。

芽胞菌

殺菌力

一般的に、栄養細胞に比べて芽胞状態になると殺菌が困難になり、おおよそ100倍ぐらいの濃度が必要になります。しかしながら、過硝酸溶液は濃度を上げるのが簡単にできるので、合成した原液を数千倍程度希釈しても、芽胞菌の無菌化が容易に行えます。従来の薬剤より高い殺菌力を実現出来ています。しかしながら、この実験結果はピペッティングなど実験作業の都合上の理由により限界が決まってくる数値で有り、実際には高濃度の過硝酸溶液を用いることで、より短時間の殺菌が実現出来ます。
Bacillus subtilis
の芽胞菌に対する殺菌の実例を下記に示します。過硝酸の原液の数百倍の希釈液になりますが、生菌数を1桁低下させるのに必要な時間であるD値が1.1秒と非常に短くなっています。理論的には濃度を上げることでより小さいD値が得られるのですが、このようなタイムコースの実験を行うためにはピペッティングの限界という実験の都合上の問題があります。

ウイルス

殺菌力

遺伝性物質から構成されるウイルスは細胞ではないので、正式には「殺菌」ではなく「不活化」の表現が好ましいが、ここでは殺菌力と表記する。一般的には、栄養細胞と芽胞菌の間ぐらいの間ぐらいの薬剤耐性を持っているとされる。
ノロウイルスの代替として用いられるネコカリシウイルス(FCV: Feline calicivirus )のF9の株を過硝酸で処理し、ネコ腎細胞(CRFK)に感染させて、感染力価を評価したところ、合成した過硝酸溶液の数万倍の希釈液でも検出限界以下まで不活化することに成功しています。微生物の場合は、寒天培地の上でコロニーを形成させて生菌数をカウントすれば良いのですが、ウイルスの場合は実際に動物細胞に感染するかどうかで評価しないといけないので、実験的にはかなり手間がかかります。

有機夾雑物存在下

生体高分子との反応

殺菌の基礎的な実験は不純物の入っていない菌液を用いるのが一般的です。しかしながら現実環境下では有機夾雑物が存在しており、殺菌剤の有効成分が失われてしまうことが少なくありません。次亜塩素酸やオゾンなどはその典型例であり、菌液では高い殺菌力を実現できても、現場で利用すると殺菌力が数桁落ちてしまう場合もあります。現実環境では、生体組織、血液、食品残留物などの有機夾雑物に細菌が付着している場合が多く、これらの対する耐性が殺菌剤の能力の一つといえます。
BSAなどのタンパク質を混合した菌液に対して殺菌を行う基礎研究を行ったところ、過硝酸による殺菌は次亜塩素酸と比べて数十倍の有機夾雑物濃度であっても同じ殺菌力を発揮できることが分かりました。つまり、有機夾雑物存在下でも殺菌は十分に行えるということなのですが、反応速度論的な観点からすると、生体高分子との反応速度定数が高くないということが言えます。コンソーシアムでは、このような基礎的な研究を共通課題として、それぞれの生体高分子との反応速度定数を求めるなどの基礎研究も進めております。このような研究は、タンパク質の反応サイトを明らかにするなど、過硝酸による殺菌の分子メカニズムの解明にもつながり、科学研究としての価値が高いです。

溶液での実験

これまでの研究で、BSAなどの生体高分子を混合させた反応系においても、高い殺菌力が実現できることが明らかになっています。、血液濃度よりも高濃度なタンパク質が共存する環境下においても芽胞菌を検出限界以下まで不活化することにも成功しています。過硝酸のこのような基礎特性は殺菌剤として優れていることを示しており、人体組織な汚染された機器でも高い殺菌力を発揮できることが期待されます。

汚染モデルにおける殺菌

EN ISO 15883のWD(Washer-disinfectors)用の洗浄用汚染モデルで、スキムミルク、砂糖、バター、全粒粉をSUS試験片に塗布したモデルがあります。これに芽胞菌を混合したモデルを作成し、過硝酸による殺菌を行いましたが、検出限界以下までの殺菌に成功しています。
生体の皮膚消毒を模擬するために、黄色ブドウ球菌をブタ皮に塗布したモデルの殺菌の実験も進めています。皮膚表面の有機夾雑物汚れに加えて、組織表面の微細構造による殺菌阻害効果もありますが、皮膚消毒の目安である菌数の2桁低下に成功しています。現在はより詳細な実験系を構築して研究を進めているところです。

歯科応用

対象疾患

口腔内には様々な菌が存在しており、細菌が関係する疾患は非常に多いです。う蝕(むし歯)、根管治療、歯周病、歯周炎など殺菌が必要ですが、う蝕は殺菌が困難なので、タービンを用いて機械的に感染部位の除去を行います。理由としては、生体に為害性の出ない濃度の殺菌剤では十分に殺菌出来ないからです。その様な疾患に対して過硝酸は有効だと考えます。プラズマ殺菌の研究を行っていた時より、歯科応用の研究は進めており、様々なポジティブな結果が得られています。

バイオフィルム

歯科分野で殺菌が困難な理由の一つして、口腔内細菌がバイオフィルムを形成するというのがあります。歯の表面に歯垢というべったりしたのが付く場合があるかと思いますが、これはミュータンス菌などがバイオフィルムを形成した結果になります。このようなバイオフィルムにより歯質の脱灰が進み、う蝕へとつながります。バイオフィルムを形成させたモデルに対して、十分な殺菌力が得られる事が分かりました。
"Microbicidal activities of low frequency atmospheric pressure plasma jets on oral pathogens", Hiromitsu YAMAZAKI, Tomoko OHSHIMA, Yuji TSUBOTA, Hiroyasu YAMAGUCHI, Jayanetti Asiri JAYAWARDENA, Yasushi NISHIMURA, Dental Material Journal (2010).
"Investigation of a novel sterilization method for biofilms formed on titanium surfaces", Rei NAGAO, Daisuke ESAKI, Yukie SHIBATA, Satoshi IKAWA, Katsuhisa KITANO, Yasunori AYUKAWA, Yasuyuki MATSUSHITA, Masaaki MATSUZAKI, Kiyoshi KOYANO, Dental Material Journal (2019).

ヒト抜去歯モデル

う蝕形成菌による感染症であるむし歯は、消毒剤では無菌化が不可能であり、臨床では機械的切削による感染部位の除去が行われている。歯質に入り込んだ口腔内細菌の殺菌の研究を行うために、ヒト抜去歯を用いたモデルを用いて殺菌を行いました。
"Plasma Sterilization of Caries-infected Dentin Model with Reduced-pH Method"、臼井 エミ, 大島 朋子, 山崎 弘光, 井川 聡, 北野 勝久, 前田 伸子, 桃井 保子”、日本歯科保存学雑誌 (2015).
"Plasma-treated water eliminates Streptococcus mutans in infected dentin model", Tatsuya TASAKI, Tomoko OHSHIMA, Emi USUI, Satoshi IKAWA, Katsuhisa KITANO, Nobuko MAEDA, Yasuko MOMOI, Dental Material Journal (2017).

動物実験

より生体に近いモデルでの実証を行うために、小動物での根管治療モデルの研究を行っています。こちらも特に問題が無く、殺菌が出来ました。
“Low-Temperature Atmospheric Pressure Plasma in Root Canal Disinfection: The Efficacy of Plasma-Treated Water as a Root Canal Irrigant”, Kaname Yamamoto, Tomoko Ohshima, Katsuhisa Kitano, Satoshi Ikawa, Hiromitsu Yamazaki, Nobuko Maeda, Noriyasu Hosoya, Asian Pacific Journal of Dentistry (2017).

農業応用

種子殺菌

スプラウト用の種子の殺菌を行いました。スプラウトは生食するため、生菌数の管理が重要です。種子の段階で初発の菌数を下げておくのが良いですが、強い殺菌剤を使うと種子にダメージを与えてしまうので、使える殺菌剤の濃度には限界があります。過硝酸による殺菌の一例を下記に示します。過硝酸の原液の数百倍の希釈液を用いて、1分で生菌数が検出限界以下になりました。つまり種子の時点で完全無菌化に成功したのですが、発芽試験を行ったところ、発芽率、成長率に影響は無かったです。さらに、この殺菌済みの種子をクリーンベンチで無菌的に培養してみたところ、成長したスプラウトからは菌が検出されませんでした。これは単なるデモンストレーションで実用化の際にはここまで殺菌しなくても良いかと思いますが、安全安心社会の実現のためには、少しでの細菌感染のリスクを下げるというのは良いのでは無いでしょうか。
ヨーロッパの研究期間との共同研究で細菌感染した種子の殺菌を行っています。植物防疫法により種子の輸入は制限されていますので、大臣の特別許可制度を利用して、特別に輸入して実験をしています。まだ途中経過になりますが、なかなか良い感じで検出限界以下に近い殺菌ができております。

食品応用

食品そのものの殺菌

食品そのもに対する殺菌の研究を行っています。農場で得られた生鮮食品の多くは細菌に汚染されており、収穫後に増殖することで問題となることがあります。カット野菜は次亜塩素酸で殺菌することが多いですが、その様な殺菌現場でも利用することが出来ると考えています。いくつかの生鮮食品に対して殺菌の実験を進めています。

食品容器の殺菌

食品を長期保存するためには殺菌が必須です。レトルトパックや缶に入れた後に、容器ごと煮沸することで殺菌を行う場合もありますが、風味の劣化などの問題もあり、無菌充填が行われるようになってきています。事前に容器を無菌化するために、過酸化水素や過酢酸などが使われていますが、このような用途に過硝酸が使えると考えており、実験を進めております。。


バナースペース

過硝酸応用研究開発コンソーシアム

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