FIX Project Homepage
2007年11月22日 

研究内容について

(A)実験装置の概要
(B)研究内容
(C)研究実績

(A)実験装置の概要 戻る

FIX本体概要


FIX装置では、全長6m程度の真空容器内にFRCプラズマを生成し、その性質を調べたり性能向上のための実験を行っています。装置は、主にプラズマ生成部と呼ばれる部分と、プラズマ閉じ込め部と呼ばれる部分とで構成されています。FIX装置を3次元で体験するコーナーはこちら

プラズマ閉じ込め部は、金属(ステンレス)製の真空容器となっており、プラズマ生成部においてテータピンチ法で生成した高温高密度のFRCプラズマを移動させてきて、この部分で長時間(<0.5ms程度)保持すると同時に、さまざまな計測や、回転磁場中性粒子ビーム波動といった追加熱の実験を行っています。






典型的な放電波形を左に示します。上から順に、プラズマの半径、体積およびプラズマ中に補足されている磁束の時間変化を表しています。黒い線が通常の放電時で、赤い線が中性粒子ビームを入射した場合となっています。中性粒子ビームを入射することによって、プラズマの減衰が緩やかになり、長時間維持できている様子がわかります。

この実験では、プラズマ生成部で生成したFRCプラズマは、0.1ms以内に閉じ込め部に移送されます。このとき、プラズマは超音速にまで加速され、対向する装置端部で反射を繰り返してやがて閉じ込め部の中央に落ち着くことになります。

補足磁束が1mWb程度というのは、この規模のプラズマ実験としては比較的小さいのですが、これはこの装置が半径方向には小さい(プラズマ半径が20cm程度)ことに起因しています。


プラズマ生成部(テータピンチ)
右の写真が、FIX装置のテータピンチ部です。石英製放電管の外側を金属性の1ターンコイルが取り巻く構造をしています。このコイルに40kV程度の高電圧を印加することによって、放電管内のガスを電離させ、高温のプラズマを生成します。

手前に見えるのがHe-Neレーザ干渉計で、プラズマの密度を測定します。
奥に見えるのがすべて電源となっています。

中性粒子ビーム
外部から高エネルギーの粒子を注入することによって、水にお湯を足したときのように、プラズマを加熱することができます。ただし磁場でプラズマを閉じ込めている以上、荷電粒子を外部から注入するのは困難ですので、中性の粒子ビームを用います。FIXでは水素原子ビームを入射することによって、主としてプラズマ中の電子を加熱することができるのですが、FIX閉じ込め部の磁場強度があまり大きくないため、プラズマに注入された後イオン化した高エネルギー粒子を効率よく閉じ込めておくことができないという問題があります。中性粒子ビームを用いて効率よくプラズマ加熱を行うためには、より強い磁場を伴う(=補足磁束の大きい)FRCプラズマを生成・維持することが必要になります。
回転磁場
テータピンチとは違うFRC生成・維持手法として、回転磁場を利用する方法があります。これは、プラズマの対称軸に直交する磁場を外部から印加し、回転させることによってちょうど誘導電動機のようにプラズマ内に電流を駆動するものです。テータピンチに比べて生成されるプラズマの温度・密度は低いですが、電流の定常維持が可能なため、比較的長時間(〜数ms程度)FRC配位を維持することができます。

回転磁場用電源の開発についてはこちらを参照してください。


波動励起

準備中

計測装置
FIX装置の内部には、磁場分布を測定するための磁気プローブアレイが設置されています。他に、必要に応じて静電プローブ(電子温度、密度計測)、CO2レーザ干渉計(電子密度)、ドップラー分光計測(イオン温度、流速)、トムソン散乱計測(電子温度、密度)、フォトダイオードアレイ(プラズマ発光分布)、軟X線分光計測(電子温度等)の計測装置を設置します。右図はトムソン散乱装置の概要図です。




(B)研究内容 戻る

回転磁場によるFRCプラズマの生成・維持

テータピンチやスフェロマック合体といったFRCプラズマ生成法においては、生成初期に膨大なパワーをプラズマに投入することによって、非常に短時間のうちに高ベータ配位を形成しています。このため、比較的高い温度(〜数百eV)のFRCプラズマを生成することができるのですが、その反面パワーの投入が生成段階に限定されるため、プラズマを長時間維持することは困難です。

一方で、回転磁場(RMF)によるFRC生成では、プラズマに投入できる電力は小さいのですが、非誘導的な電流駆動が可能ですので、容易にプラズマの長時間維持が可能となります。FIX装置では金属製真空容器に対応するため、回転磁場生成用アンテナを真空容器の内部に設置しています。すでに再現性の良いFRC配位の形成および数ms程度の長時間放電に成功しています。現状ではプラズマの温度密度が非常に低いため、これを増加させることが今後の課題となります。

回転磁場(RMF)によるFRCプラズマ生成・維持については、米国ワシントン大学においても盛んに実験研究がなされています。



右の写真が、FIX装置閉じ込め部の内部です。上下左右に見える管が回転磁場用のアンテナです。
中心ソレノイドによるFRCプラズマの電流立ち上げ・維持
回転磁場はFRCプラズマを再現性よく生成することができる反面、できたプラズマの温度密度はあまり高くありません。そこで、回転磁場によって生成したFRCプラズマに追加的にパワーを投入することによってパラメータを向上させることを目指しています。プラズマにパワーを投入する手段として、中心ソレノイドによるオーミック加熱と、次に述べます中性粒子ビーム加熱を考えています。

オーミック加熱は、トカマクやRFPといった閉じ込め方式では非常に一般的なプラズマ加熱法です。装置の中心軸上にソレノイドコイルを設置し、これとプラズマとがトランス結合することを利用してプラズマ内の電流を駆動し、ジュール熱で加熱を行ううという手法です。
ただし、FRCプラズマでは本来中心軸上に構造物は存在していませんので、そこにソレノイドコイルを設置することによる影響を考慮する必要があります。また、トカマクと違って周方向の磁場が存在していないため、単純にソレノイドコイルを設置しただけではFRC配位を形成することは不可能です。

そこで本研究では、回転磁場によって形成した低密度のFRCプラズマに対して、中心ソレノイドを用いて電流駆動を行い、密度・温度の増加を目指しています。

現在ソレノイドコイル試作中(2006/7/25)。

中性粒子ビームによるFRCプラズマの加熱
上述の中心ソレノイドによってプラズマ密度を上昇させることができたら、中性粒子ビームを入射することによって電子加熱を行うことができます。

既存のFRCプラズマは生成時にイオンが選択的に加熱されることから、イオン温度が電子温度よりも高くなっていました。このことは、イオンの有限ラーマー半径効果を顕著にし、結果的にFRCプラズマの安定性に寄与しているとの指摘もあるのですが、イオンのラーマー半径がプラズマサイズに比べて有意な大きさになっているということは、少なくとも粒子の閉じ込めに悪影響を与えている可能性があります。また、プラズマ電流の減衰が著しいことの原因も、電子温度が低いことにあるのかもしれません。

本研究で目指している、回転磁場+中心ソレノイド+中性粒子ビームという組み合わせは、プラズマ中の電子を選択的に加熱する手法のみで構成されています。もちろn、電子からイオンへの熱伝導がありますので、イオンもある程度は加熱されることになりますが、それでも従来のFRCに比べると電子温度が高く、イオンの有限ラーマー半径効果が利いてこないようなプラズマを得ることができると考えられます。それによって、閉じ込めが向上することを期待しているのですが、一方で大域的な安定性が損なわれてしまう可能性もあり、そのあたりを実験的に検証するのが重要となってきます。


高ベータプラズマ配位における自己組織化
FRCというプラズマ配位は、あらかじめ磁気容器を作っておいて、そこにプラズマを流し込んでできるわけではありません。そもそもプラズマを閉じ込めるための磁場は、プラズマ内部を流れる電流によって生み出されます。つまり、プラズマ配位の生成において、われわれはすべてをコントロールできるわけではなく、ある程度はプラズマの自律性に任せてしまう必要があります。このような自己組織化現象はプラズマの世界で多く見ることができます。

低ベータのプラズマについては、自己組織化の指標として、磁気ヘリシティというものがよく用いられます。これは、プラズマ中の磁場の鎖交度合いを表すもので、低ベータのプラズマは「磁気ヘリシティを一定に保ちながら、磁気エネルギーが最小の状態に緩和する」という仮説が、実験結果を非常によく説明できることが知られています。
ところが、高ベータプラズマ配位に関しては、もう少し複雑になります。単に磁気ヘリシティを考えるだけでは緩和過程を記述することができず(そもそも、理想的なFRCでは磁気ヘリシティはゼロになります)、イオンと電子の「流れ」を考慮する必要が出てきます。


プラズマの大域的なダイナミクスに関する研究(天体プラズマとの関連)

準備中






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主な学術論文(FIX装置が今のものになってから?)

著者 タイトル 雑誌名 発行年
M.Inomoto, S.Yamamoto, N.Iwasawa, K.Kitano and S.Okada Propagation nad damping characteristics of low-frequency waves in heild-reversed configuration plasmasz Physics of Plasmas 2007
M.Inomoto, K.Kitano and S.Okada Field-reversed configuration maintained by rotating magnetic field with high spatial harmonics Physical Review Letters 2007
S.Okada, M.Inomoto, S. Yamamoto, T. Masumoto, S.Yoshimura and K. Kitano Behaviour of a low frequency wave in a FRC plasma Nucluar Fusion 2007
S.Okada, K.Kitano, H.Sumikura, T.Higashikozono, M.Inomoto, S.Yoshimura and M.Ohta Sustainment and additional heating of high-beta field-reversed configuration plasmas Nucluar Fusion 2005
S.Okada, K.Yamanaka, S.Yamamoto, T.Masumoto, K.Kitano, T.Asai, F.Kodera, M.Inomoto, S.Yoshimura, M.Okubo, S.Sugimoto, S.Ohi and S.Goto Excitation and propagation of low frequency wave in a FRC plasma Nucluar Fusion 2003
N.Iwasawa, S.Okada and S.Goto Global eigenmodes of low frequency waves in field-reversed configuration plasmas Physics of Plasmas 2004
T.Asai, M.Inomoto, N.Iwasawa, S.Okada, and S.Goto Stabilization of global movement on a field-reversed configuration due to fast neutral beam ions Physics of Plasmas 2003
K.Kitano, S.Maeshima, S.Okada and S.Goto Dynamic process during axial magnetic compression of field-reversed configuration for equilibrium shape control Physics of Plasmas 2001
S.Okada, T.Asai, F.Kodera, K.Kitano, Y.Suzuki, K.Yamanaka, T.Kanki, M.Inomoto, S.Yoshimura, M.Okubo, S.Sugimoto, S.Ohi, S.Goto Experiments on additional heating of FRC plasmas Nucluar Fusion 2001
T.Asai, Y.Suzuki, T.Yoneda, F.Kodera, M.Okubo, S.Okada, and S.Goto Experimental evidence of improved confinement in a high-beta field-reversed configuration plasma by neutral beam injection Physics of Plasmas 2000
Y.Suzuki, S.Okada and S.Goto Two-dimensional numerical equilibria of field-reversed configuration in the strong mirror field Physics of Plasmas 2000
K.Yamanaka, S.Yoshimura, K.Kitano, S.Okada and S.Goto Heating experiment of field-reversed configuration plasma by lowfrequency magnetic pulse Physics of Plasmas 2000
K.Kitano, K.Yamanaka, S.Okada and S.Goto Axial length and separatrix radius behavior of field-reversed configuration plasma in dynamic compression of mirror distance Physics of Plasmas 2000
S.Okada, K.Kitano, H.Matsumoto, K.Yamanaka, T.Ohtsuka, A.K.Martin, M.Okubo, S.Yoshimura, S.Sugimoto, S.Ohi, S.Goto Axial compression of a eld reversed con guration plasma Nuclear Fusion 1999
T.Ohtsuka, M.Okubo, S.Okada and S.Goto Particle end loss in the edge plasma of a field-reversed configuration Physics of Plasmas 1998
H.Himura, S.Ueoka, M.Hase, R.Yoshida, S.Okada, and S.Goto Observation of collisionless thermalization of a plasmoid with a field-reversed configuration in a magnetic mirror Physics of Plasmas 1998
H. Himura, H. Wada, S. Okada, S. Sugimoto, S. Goto Drift motion of field-reversed configuration plasma across a curved magnetic field Physical Review Letters 1997
H.Himura, S.Okada, S.Sugimoto, and S.Goto Rethermalization of a field-reversed configuration plasma in translation experiments Physics of Plasmas 1995