FIX Project Homepage
2007年4月16日

ここは、大阪大学大学院工学研究科原子分子イオン制御理工学センタープラズマ粒子制御研究部門で実施されている超高温プラズマ研究 FIX Project のホームページです。


当分作成中。本ホームページの内容は予告なく変更することがあります。

FIX Projectとは?

FIXとは、FRC Injection Experimentの略称です。FRCとは、磁場反転配位(Field-reversed Configuration)と呼ばれる核融合磁場閉じ込め方式の一種です。本装置では、全長6mにも及ぶ大きな真空容器内に、各種コイルを用いてプラズマを生成し、その特徴を調べると同時に、核融合炉心プラズマとして必要となる閉じ込め性能(高温高密度のプラズマを長時間保持できること)の実現を目指しています。また、プラズマ基礎物理研究としての活用も視野に入れています。本プロジェクトは、プラズマ粒子制御研究部門の3講座合同で行っています。



FRCとは?
プラズマは荷電粒子(イオンと電子)によって構成されていることから、磁場をうまく形成してやることによって高温のプラズマを空間内のある領域に保持することが可能となります(磁気容器)。 FRCは、そのような磁気容器の一種であり、中心軸に対して軸対称な形状をしています。他の磁場閉じ込め方式との大きな違いは、主としてプラズマ中を流れる電流自身が作り出す磁場によってプラズマが閉じ込められているという内部電流系トーラスの一種であり、配位の平衡状態やダイナミクスがプラズマ自身によって決定されるという自己組織化現象を伴った配位である点と、そのような内部電流系トーラスの中でも特にFRCは中心軸を周回する方向の電流のみで構成される極めてシンプルな配位である点を挙げることができます。このように、一見シンプルでありながらも、自己組織化という非線形・複雑系のメカニズムを併せ持ったプラズマであることが、FRCというプラズマを興味深く、また扱いにくいものにしていると言えます。 戻る

核融合炉心プラズマについて
2005年に、国際熱核融合炉ITERの建設サイトがフランス・カダラッシュに決定されました。ITERは、トカマクと呼ばれる大型の磁場閉じ込め方式によって超高温のプラズマを作り出し、核融合炉を実現することを目的としています。すでに日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)のJT-60等のトカマク装置において、核融合反応の出力がプラズマの加熱に必要な入力を上回る「臨界プラズマ条件」が達成されており、核融合によってエネルギーを取り出すことが可能であることは実証されていますが、ITERではさらに外部からの加熱を行わなくても核融合反応によって発生する熱によって反応が維持されるような「自己点火条件」を実証することが目的のひとつとなっています。FRC方式は、残念ながらまだまだ核融合反応を発生させることができるようなレベルではないのですが、他の方式に比べて磁場の利用効率が著しく優れているという特徴を持っており、FRCプラズマをうまく制御することができるようになれば、核融合炉心プラズマとして非常に魅力的であると考えられます。 戻る

プラズマ基礎物理研究との関連
FRCの研究の歴史は、50年にも及ぶ長いものなのですが、いまだに核融合炉心プラズマとしての性能は優れているとは言えず、またプラズマの振る舞いについてもわかっていないことが数多く残されています。その理由として、FRCプラズマは生成後に外部から加熱を行うことが非常に困難であったことが挙げられます。トカマクと異なって強い磁場を持たないFRCは、外部からの波動の印加や誘導による加熱の効率が著しく悪くなります。このため、FRCプラズマは生成されてから非常に短い時間しか持続されず、激しい減衰の下での実験となっていました。これは、核融合炉心プラズマ実験としては好ましくない点なのですが、逆に基礎物理として考えるとそこには非常に興味深い「自律的構造形成」のメカニズムがあると言えるのです。

天体におけるプラズマ、たとえば太陽表面のコロナや、地球磁気圏、あるいは星間プラズマにおいても、その大域的な構造は自律的に形成されるものです。その結果として、太陽表面での爆発現象であるフレアや、プラズマ粒子の放出現象、はたまたブラックホールにおける降着円盤の構造まで、プラズマの自己組織化によって形成されてると言えるかもしれません。そういった意味ではFRCの研究は、世の中に普遍的に存在するプラズマ現象を解明するための手段としても有用と考えられます。

FRCにおいては、プラズマの圧力と外部の磁場の圧力がほぼつりあっています。このような配位と、トカマクのように磁場の圧力が支配的であるような配位との間には、プラズマの性質において大きな違いがでてきます。そのひとつが、イオンの描く軌道がプラズマの大きさに比べて無視できないほど大きくなることによって生じる「二流体効果」です。二流体効果は、プラズマの大域的な性質に影響を与えると同時に、局所的な現象をも変えてしまう可能性があります。

FRC配位の中には、磁場がゼロになる地点があります。その周辺の磁場構造から、OポイントやXポイントと呼ばれるこれらの地点の周辺では、前述した二流体効果がさらに顕著になってきます。このような場合、単に電磁力だけでなくイオンの動きを考慮してプラズマの釣り合いを考える必要があり、より複雑な現象として捉える必要があります。 戻る

研究形態について

原子分子イオン制御理工学センター・プラズマ粒子制御研究部門には3つの講座があり、それぞれにプラズマの基礎物理や応用の研究を行っています。FIX Projectは、各講座に属するスタッフが共同して運営している”分野横断的”研究となっています。これは、装置が非常に大きいため単一の講座のみでは維持・運営が困難であるという現実的な理由もありますが、それにも増して「高温プラズマ実験研究」には普遍的な学術的価値が存在するという(今となっては固陋ともいえる)信念、あるいは期待によるものとも言えます。大げさですが。FIX Projectへと連なる大阪大学超高温プラズマ研究の沿革はこちら。 戻る